日本版LLP(有限責任事業組合)を選択すべきか?!(8日目補講です)

こんばんは、先週金曜日忙しくサボってしまいました...6/30(木)のブログでは、LLPを選択すべきかを検討する際、比較対象となる株式会社や有限会社について、配当による利益分配を受けた時の留保金課税について触れましたが、とてもややこしいので今日は8日目の補講として、

「誰でも分かる?!同族会社の留保金課税」

をテーマに書いてみたいと思います。

税務上、会社組織というものは、

「株主が出資を行い、経営陣が事業を行い獲得した利益を株主に還元する」

ものと考えています。そして、

① 獲得した利益に対して、法人税を課税
② 株主に分配された配当に対して、個人所得税(配当所得)を課税

されることとなります。

☆基本的に法人株主は課税されません。次のフローをご覧下さい。

  事業会社 A社

     ↓

  株主 B社(事業会社Aの100%株主)仮にA社が配当しても、配当金に課税なし

     ↓

  株主 C社(株主B社の100%株主)仮にB社が配当しても、配当金に課税なし

     ↓

  株主 D社(株主C社の100%株主)仮にC社が配当しても、配当金に課税なし

     ↓

  株主 個人Eさん(株主D社の100%株主)仮にD社が配当すると、Eさんに所得税がかかる

お分かりいただけると思いますが、法人株主が配当金に対して課税(40%と仮定)されてしまうと、

(1)A社がB社に100配当したとして、B社に残るのが60となります。

(2)この60をB社がC社に配当したとすると、また課税されてC社に残るのは、36になります。

(3)またまたこの36をC社がD社に配当したとすると、また課税されてD社に残るのは、21.6になります。

(4)Eさんに配当金として回ってくるのは、21.6しかなく、その配当に対しても所得税・住民税(最高税率50%)がかかる

と、あまりにもエグい?!ということで、法人株主は配当金に対して課税されないこととなります。
(※25%未満の所有割合の場合は、また違う取扱いとなりますので、ご注意下さい。)

ということで、法人株主は配当金に課税は生じないハズなのですが、その配当金をもらった会社が配当しない(もったいないから~)ときは、”留保金課税”が発生する可能性が出てきます。(留保金課税も法人税課税の一種です)

公開会社などは多くの株主が存在し、会社は株主利益を無視することはできません。ですから会社が配当するとお金がもったいない...だから配当しない、なんてことは生じないと考えられています。(実際はありますが...)

なので、同族会社(3人以下の株主で50%超を所有)に限って、留保金課税という制度を設けています。

先週木曜日ブログで説明した

■設立後10年以内の新事業創出促進法の中小企業者
■自己資本比率が50%以下の中小法人 など

は留保金課税を現在停止されている(租税特別措置法という時限立法上)のですが、永遠ではありません。

では、基本的な留保金課税の計算を説明します。

【同族会社に対する留保金課税】

課税留保金額 = 所得(その事業年度の利益) - ( 配当 + 法人税等 ) - 留保控除額 

■ 留保控除額 ( 次の3つの内、最も多い金額 )
(1) 所得基準額 当事業年度の所得等の金額×35% 
(2) 定額基準額 年1500万円 
(3) 積立金基準額 期末資本金の25%相当額ー期末利益積立金額 

■ 課税留保金額に対する税率 

課税留保金額 税 率 
(1) 年3,000万円以下の部分 10% 
(2) 年3,000万円超年1億円以下の部分 15% 
(3) 年1億円超の部分 20% 

ここで、とにかく着目して欲しいのは、

課税留保金額 = 所得(その事業年度の利益) - ( 配当 + 法人税等 ) - 留保控除額 

この青字部分配当の配当とは、自分が分配(支出)する配当のことです。

この赤字部分所得(その事業年度の利益)には、実は受け取った配当金が含まれているのです。当たり前だろ!って? いえいえ、先週木曜日のブログで、法人税課税上の所得は、

P/L上 +1367万円(受取配当金)
税務上  △1367万円(受取配当等の益金不算入)

差引き    0万円

となり、所得に含まれないのですが、上記の所得(その事業年度の利益)では、しっかりと受取配当金が全額含まれることとなるのです。その計算アプローチは省略しますが、

「同族会社の留保金課税」においては、受取配当金は課税対象になる

ことを覚えておいて下さいね!! 

【ご参考まで】
中小企業庁HPより

「上手に使おう!中小企業税制45問45答」

Q3 同族会社の「留保金課税」って、何ですか? 
http://www.chusho.meti.go.jp/zeisei/faq45/faq45/faq03.htm

Q4 中小企業において、留保金課税が停止されるのは、どのような場合ですか? 
http://www.chusho.meti.go.jp/zeisei/faq45/faq45/faq04.htm

Q5 留保金課税停止措置でいう「自己資本比率」(Q4参照)は、どのようなものですか? 
http://www.chusho.meti.go.jp/zeisei/faq45/faq45/faq05.htm