1. 技術研究組合の変遷

1961年

民間の共同研究促進のため「鉱工業技術研究組合法」が制定されました。第一号は「高分子原料技術研究組合」

1966年

高度経済成長下において,国が資金を全面的に負担し産業界,学界などとの協力体制のもとに
研究開発を推進するために大型工業技術研究開発制度が設けられました。その後、その「国家事業」の
受け皿として、原子力製鉄技術研究組合などの技術研究組合が設立されました。

1976年以降

76年に「超LSI技術研究組合」、90年に「太陽光発電技術研究組合」、96年に「汎用電子乗車券技術研究組合」など多くの組合が設立され、
超LSI、太陽光発電、SUICA等の実用化を推進しました。

2009年

2009年に鉱工業技術研究組合制度(1961年創設)が改正され、技術研究組合制度になりました。

主な改正点
●研究対象が、「鉱工業の生産技術」から「産業活動において利用される技術」に広がりました。
●大学や試験研究独立行政法人の組合員資格が明確になりました。
●株式会社・合同会社への組織変更、新設分割ができるようになりました。
●2人以上での設立が可能になりました。創立総会が廃止され、設立手続が簡便になりました。

2. 技術研究組合の特徴

法人格がある(認可法人)
組合員から独立した法人格を有する共同研究組織です。
各種取引の主体や登記等の名義人になることができます(雇用、賃貸借契約、金融機関 の口座開設、資産の保有・管理、行政許認可申請、不動産登記、特許権の登録など)。
主務大臣への設立認可申請や届出、組合員総会・理事会の開催などを通じて、組織運営 の透明性と信頼性が高まります。

組合員資格
共同研究の成果を直接または間接に利用する者(法人・個人、外国企業・外国人を含む) が組合員になることができます。
大学や試験研究独立行政法人、高専、地方公共団体、試験研究を主たる目的とする財団 等が組合員として参加できるため、産学官連携の器として活用できます。

賦課金(ふかきん)による運営(費用処理)
組合員は、技術研究組合に支払う賦課金を費用処理できます(研究開発税制の適用あり)。
組合員は、賦課金の限度で技術研究組合及び第三者に責任を負います。
 技術研究組合は非出資組織であるため、その事業に必要な費用を組合員に賦課します。組合員は技術研究組合に賦課金を支払いますが、技術研究組合の財産に対する持分は取得しません。組合員の議決権及び選挙権は、賦課金の負担割合にかかわらず平等です。

圧縮記帳
技術研究組合が、賦課金をもって、試験研究用資産を取得し、又は製作した場合は、1円まで圧縮記帳でき、減額した金額に相当する額を損金の額に算入できます(租税特別措置 法66条の10)。

会社への組織変更・分割
研究開発終了後は、組織変更または分割により会社化して、研究成果を散逸させることなく、円滑に事業化することができます。
収益のあがらない研究開発期間は組合員において研究開発費を費用処理しつつ、研究開発終了後に会社化することで、欠損金の累積なく、事業を開始することができます。

3. 技術研究組合の現状

2020年11月現在、58の技術研究組合が存在しています。日本全国で58社ですので、それほど多くありません。この馴染みの少ない技術研究組合は、
その多くが政府主導の国家戦略や、産業界の業界共通の課題への対応といった場面で設立される組合のため、絶対数が少なくなっています。

設立するためには、法務局にまず登記申請するのではなく、主務大臣(組合の行う試験研究の成果が直接利用される事業を所管する大臣[法第179条])の設立許可を得なければなりません。絶対数が少ないのも、納得ですね。

その監督官庁(主務大臣)となるものの過半数は経済産業省で、その他、 農林水産相、国土交通省や総務省が設立許可を行うこともあります。

参考:CIP〔技術研究組合〕の現況について(令和2年11月)

https://www.meti.go.jp/policy/tech_promotion/kenkyuu/saishin/gikumi1.pdf